2019年5月 喫煙について|大田区蒲田、雑色の内科・眼科

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2019年5月 喫煙について

百害あって一利なし

タバコの煙は実に4,000種類以上の化学物質で形成されています。このうち有害物質とされているものが約200種類。更に、発癌性物質は50種類以上も含まれています。タバコを吸い続けると、35歳頃より非喫煙者に比べて死亡率が上がり出します。そして60歳の死亡率は喫煙者20%、非喫煙者10%と差がつきます。

有害物質の中でも特に有害であるとされている成分がニコチン、タール、一酸化炭素です。

ニコチンは神経毒性をもつ物質で、末梢血管を収縮させ、血圧を上昇させる作用があります。また、依存(中毒)性があり、麻薬であるコカインやヘロインよりも強いです。また、一度に多量摂取すると成人の場合30~60mgで致死量になります。タバコ1本に含まれるニコチンの量は10~20mg、タバコ1本の喫煙で摂取するニコチン量は3~4mg(タバコパッケージに表記されているニコチン量)です。万が一幼児が誤って食べてしまうと非常に危険で、1本でも致死量になる可能性があります。

タールは、タバコの成分が熱で分解されてできる粘着性の物質で、ベンゼンなど多くの発癌性物質が含まれています。タバコを吸った時にフィルターに付着する茶色い物体がタールで、細胞に付着し、身体に溜まります。禁煙の一歩手前の段階としてタールの量を下げる行為はあまり意味がないとされています。実際にタバコ1本に含まれているタールの量は、使用している葉っぱが同じ物であれば、同じ量になります。

一酸化炭素は、タバコが不完全燃焼するときに発生する物質で、酸素の200倍以上ヘモグロビンと結合しやすく、取り込んだ酸素が全身に回らず、息切れや酸欠状態を引き起こしてしまします。身体が酸素不足状態になり、活動量が低下し、疲れやすくなります。また、血液中のコレステロールを酸化させ、動脈硬化を促進する作用もあります。細胞を攻撃する活性酸素が大量に発生すると、ビタミンや蛋白質が、活性酸素を追い出そうと消費されてしまいます。口腔内には病原菌が繁殖しやすくなり、毛細血管の微小循環が悪くなり、歯周病になります。10年間で歯を失う確率は3倍になると言われています。つまり、長期間継続して喫煙を行うと、色々な病気が生じやすくなります。タバコ関連の病気として有名なのが喫煙関連三大疾患「慢性閉塞性肺疾患」・「癌」・「虚血性心疾患」。更に皮膚の老化の促進、歯周病です。肺は傷み、癌の発生率が上がり、動脈硬化が進行し、顔は老け、歯周病菌は全身に入り込み、動脈硬化などを更に増悪させます。

受動喫煙

受動喫煙というのは、自分の意志にかかわらず、他人が吸うタバコの煙を吸わされてしまうことです。吸っている本人はフィルターを通していますが、周囲の方は直接吸い込んでいます。喫煙者が吸い込むのは主流煙、タバコの先から立ちのぼり、周囲の人も吸い込む副流煙は主流煙よりもずっと多くの有害物質が含まれています。例えば、タバコの3大有害物質を比較すると、主流煙を1とした場合、副流煙にはニコチンが2.8倍、タールが3.4倍、一酸化炭素が4.7倍も多くみられます。

分煙したり、空気清浄機があれば、防ぐことができるでしょうか。夫がタバコを吸う場合、女性(同居。自分は吸わない)の肺癌リスクは1.3倍程度になります。しかし、女性に多い肺腺癌に限定すると、リスクは2倍以上にもなることが報告されています。受動喫煙の場合、空気中に広がった副流煙の微小有害物質を呼吸と一緒に吸い込むため、肺の奥深くまで入りやすく、それが肺腺癌を引き起こす一因だと推測されています。乳癌の発症リスクは最大で2.6倍になります。国際癌研究機関(WHO(世界保健機関)の外部機関)では、受動喫煙を発癌性のリスクが最も高い「グループ1」クラスに位置づけています。

タバコの副流煙には、PM2.5という微小の有害物質が大量に含まれています。中国大陸から飛来する大気汚染物質と同じです。PM2.5が虚血性心疾患、不整脈などの危険因子であり、特に急性心筋梗塞との関係が指摘されています。環境省の基準では、PM2.5の濃度は1日平均で35μg以下と定められています。全面禁煙の建物内では8~22μg程度ですが、喫煙可能な建物内ではその数倍~20倍にも濃度が上昇します。喫煙可能な居酒屋では568μgに達するとの報告もあります。WHOやアメリカ環境保護局などの基準では、緊急事態レベル(「すぐに避難すべき」あるいは「呼吸器に重大な症状が現れる」)の2倍以上に相当します。もちろん居酒屋と、家庭や職場を単純に比較はできません。しかし、喫煙者がいれば室内のPM2.5の濃度は数十~100μgになります。これらタバコに関係する疾病を予防するためには自分が禁煙することはもちろん、受動喫煙もできるだけ避けることが大切です。

受動喫煙の予防の難しさは、自分でも気づかずに副流煙などを吸い込んでいるケースが多いことです。空気清浄機があると、タバコの煙や臭いをあまり感じないので、つい安心しがちですが、空気清浄機では一酸化炭素などのガス状物質は除去できないため、有害物質を防ぐ効果はありません。喫茶店などに多い分煙の場合、禁煙場所はなんとなく空気がきれいだと思いがちです。ところが、ガラスなどで仕切られた喫煙コーナーからの人の出入りや、喫煙者の呼気や洋服に付いた有害物質の影響で、禁煙場所の空気も汚染されています。

つまり、自分の身近な人々の健康を考えたら、家の中でタバコを吸うなんて勿論のこと、ベランダでも、家の敷地内でも喫煙はやめるべきなんです。職場でも建物内に加えて敷地内を禁煙にするべきなのです。

電子タバコについて

日本禁煙学会の見解

加熱式電子タバコには、アイコス(PM)、グロー(BAT)、プルームテック(JT)の3種類がありますが、その基本的な構成、内容はほぼ同一です。ホルムアルデヒドなどの発癌物質やアクロレイン・ベンズアルデヒドなどの毒性物質・刺激性物質はタバコとほぼ同様です。また、ニコチンが少なくなっていますが、喫煙者はニコチンが一定の血中濃度に達するまで吸煙をするという代償喫煙行動をするため、普通のタバコと同様の生体作用があります。その性格上、煙が目に見えにくく、臭いもわずかなので、避けることが困難です。

日本呼吸器学会の見解

1.非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用は、健康に悪影響がもたらされる可能性がある。

2.非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用者が呼出したエアロゾルは周囲に拡散するため、受動吸引による健康被害が生じる可能性がある。

新型タバコは、従来の燃焼式タバコに比べてタール(タバコ煙中の有害物質のうちの粒子成分)が削減されているが、依存性物質であるニコチンやその他の有害物質を吸引する製品であり、使用者にとっても、受動喫煙させられる人にとっても、推奨できない。従来の燃焼式タバコと同様に、全ての飲食店やバーを含む公共の場所、公共交通機関での使用は認められない。

従来型のタバコ製品は燃焼式タバコ、非燃焼・加熱式タバコは、葉タバコを加熱することによりニコチン含有エアロゾルを発生させて吸引、電子タバコは液体(ニコチンを含むもの、あるいは含まないもの)を加熱してエアロゾルを発生させて吸引します。

非燃焼・加熱式タバコやニコチン含有の電子タバコには、従来型の燃焼式タバコと同様に依存性薬物であるニコチンが含まれています。燃焼式タバコをやめられない人、あるいはやめる意志のない人にとっては健康被害の低減につながるとして、従来の燃焼式タバコの代替品として電子タバコを使用することを推奨する考え方がありますが、世界保健機構では、「電子タバコのエアロゾルにさらされると、健康に悪影響がもたらされる可能性がある」と指摘しています。“見えにくいエアロゾル”中には通常の大気中濃度を上回る有害物質があるわけですから、「受動喫煙者の健康を脅かす可能性があると考えることが合理的である」、とも述べています。

今から200年以上も前に哲学者ゲーテは「喫煙にはひどい無作法、無礼な非社会性がある。喫煙者はあたり一帯の空気を汚して、喫煙したくない、社交性のある、普通の優しい人間を窒息させる……」とある手紙に記しています。

以前と比べると禁煙活動が進んでいますが、世界保健機構(WHO)は、タバコにより世界全体で毎年540万人が死亡していると報告しています。毎年5月31日は、WHOが定める「世界禁煙デー」で、今年で32回目を迎えます。厚生労働省では、平成4年に世界禁煙デーに始まる1週間を「禁煙週間」(5月31日~6月6日)と定めて、普及啓発を行っています。日本では禁煙推進学術ネットワークが、スワンスワン(吸わん吸わん)で禁煙を!をスローガンに、毎月22日を「禁煙の日」として、平成22年2月22日に登録されています。

身近な話です。現在タバコ1箱500円くらいです。海外では1000円を超える国もあります。1日1箱吸っていた場合、禁煙すると1ヶ月で約15,000円、1年で約180,000円の収入増となります。禁煙の代償は、「自分や家族、周りの人々の身体が健康になり、喜ばれることです。」

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